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福岡地方裁判所 昭和63年(わ)1430号 判決

本籍

福岡県大川市大字北古賀一三七番地の一

住居

右同

会社役員

中野孝行

昭和一五年四月二一日生

本籍

福岡県大川市大字北古賀一三七番地の一

住居

右同

会社役員

中野一榮

昭和一四年一一月一日生

右両名に対する各所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官福田孝昭出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人中野孝行を罰金一五〇〇万円に、同中野一榮を懲役一〇月に、各処する。

被告人中野孝行において右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人中野一榮に対し、この裁判確定の日から三年間その懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人中野孝行は、中野金物店の名称で福岡県大川市大字北古賀一三七番地の一において家具用金物販売業を営んでいたもの、被告人中野一榮は、同中野孝行に雇われ、経理担当者として、同被告人の事業の資金管理等を行つていたものであるが、被告人中野一榮は、同中野孝行の業務に関し、同被告人の所得税を免れようと企て、右中野金物店における売上の一部を除外する等して簿外預金を蓄積する等の方法によりその所得を秘匿し

第一  昭和六〇年分の実際総所得金額が五七八四万九八三二円あつたのにかかわらず、同六一年三月一日、福岡県大川市大字榎津字大溝三二五番地の一所在の所轄大川税務署において、同税務署長に対し、同六〇年分の総所得額が一〇九三万二八一〇円でこれに対する所得税額が二二五万六〇〇〇円である旨虚偽の所得税確定申告書を提出し、同年分の正規の所得税額二八四九万五二〇〇円と右申告税額との差額二六二三万九二〇〇円を免れ

第二  昭和六一年分の実際総所得金額が四七二一万八六〇四円、分離課税による短期譲渡所得金額が三四八万三六五六円あつたのにかかわらず、同六二年三月一六日、右大川税務署において、同税務署長に対し、同六一年分の総所得金額が一四二二万五八九九円、分離課税による短期譲渡所得金額が二五万三六五六円でこれに対する所得税額が三六〇万一五〇〇円である旨虚偽の所得税確定申告書を提出し、同年分の正規の所得税額二三六二万一二〇〇円と右申告税額との差額二〇〇一万九七〇〇円を免れ

第三  昭和六二年分の実際総所得金額が六二五八万三四〇二円あつたのにかかわらず、同六三年三月一五日、右大川税務署において、同税務署長に対し、同六二年分の総所得金額が、一八七五万〇六〇五円でこれに対する所得税額が五八二万五五〇〇円である旨虚偽の所得税確定申告書を提出し、同年分の正規の所得税額二九二六万三八〇〇円と右申告税額との差額二三四三万八三〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人両名の当公判廷における各供述

一  被告人中野孝行及び同中野一榮(検31ないし37号)の検察官に対する各供述調書

一  堤あけみ、富田英子(二通)、山口佳江(検25号)及び堀憲一の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の「脱税額計算書説明資料」及び「査察官調査書」(検5ないし21号)と題する各書面

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検1号)

一  押収してある昭和六〇年分の所得税の確定申告書等一綴(平成元年押第七〇号の1)及び昭和六〇年分所得税の青色申告書決算書等一綴(同押号の4)

判示第二の事実について

一  長渕義典の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検2号)

一  押収してある昭和六一年分の所得税の確定申告書等一綴(前同押号の2)及び昭和六一年分所得税青色申告書決算書等一綴(同押号の5)

判示第三の事実について

一  山口佳江の検察官に対する供述調書(検26号)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検3号)

一  押収してある昭和六二年分の所得税の確定申告書等一綴(前同押号の3)及び昭和六二年分所得税青色申告決算書等一綴(同押号の6)

(法令の適用)

被告人らの判示各所為は、所得税法二四四条一項、二三八条一項、二項にそれぞれ該当するところ、その所定刑中被告人中野一榮については懲役刑を選択し、以上は被告人両名についていずれも刑法第四五条前段の併合罪であるから、被告人中野孝行については同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で罰金一五〇〇万円に処し、同中野一榮については同法四七条本文、第一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で懲役一〇月に処し、被告人中野孝行において右罰金を完納することができないときは同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとし、被告人中野一榮に対し情状により同法第二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 吉田京子)

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